TVでの連続放送のために先に作った音楽を後から映像に合わせる制作方式ですが、監督と作曲家が作品のストーリーから必要な音楽を綿密に計算していて、BGMと映像が綺麗にシンクロした1話のクライマックスシーンは特に印象的です。
キャンプや自然の風景に合うように世界各地の民族音楽の要素も取り入れて作曲されたアコースティックな劇伴音楽はそれだけでも魅力的です。
一方で映像と音楽が合わさることで映像を観る人に対して意識的にも無意識にも心理的な影響を与え、作中での映像や音楽の印象も変わってきます。こうした映像音楽の性質を活用した、作品に深みを与える演出の手段としてのBGMについて考えていきます。
ゆるキャン△ 第1話「ふじさんとカレーめん」 - ニコニコ動画
時間の表記はこちらの動画を基準にしていきます。『ゆるキャン△』公式ニコニコチャンネルから第1話のみ会員登録なしで見ることができます。
目次はこちら
- BGMで作品全体の雰囲気を彩る
- BGMの流れ始めるタイミングと意味
- BGMでシーンにまとまりを作る
- BGMが鳴り終わるタイミングとその効果
- BGMを無くすリスクと無音の活用法
- BGMで伏線を張る
- 追記:2期1話のライトモチーフと心理描写
- おわりに
- 参考文献
1. BGMで作品全体の雰囲気を彩る
1-1. 自然を感じさせる音楽ジャンル
例えばクラシカルな音楽は上品な雰囲気を、カントリー音楽で使われる楽器バンジョーはコミカルな雰囲気を連想させたりというように、音楽のジャンルや楽器の音色だけでも聴く人の受ける印象はずいぶんと変わります。そこでBGMの音楽ジャンルや使う楽器を一つの作品の中である程度そろえることがよくあります。
『ゆるキャン△』BGMの作曲担当は立山秋航さんです。立山さんによればリクエストは「自然を感じさせる音楽」でケルト音楽も候補として上がりましたが、それではファンタジーな雰囲気を連想する場合もあるためジャンルを広げて、アメリカやヨーロッパを中心とした「世界のフォークミュージック」そして「アコースティックサウンド」をキーワードに制作を進めたとのことです [Sound Designer 2018]。
全体としてはアメリカのカントリー音楽の要素が大きく、加えてアイルランドやスコットランドの伝統音楽を始めとしたケルト音楽、ヨーロッパ・アルプス地方の音楽、2期では南米・アンデス地方のフォルクローレといったように世界各地の様々な民族音楽の要素が詰め込まれています。
中でもこちらの「野クルの時間 (わちゃわちゃ!)」は楽器の音色のインパクトが強くて気になっていた方もいるかと思います。アメリカのカントリー音楽の一種「ジャグバンド」のスタイルの曲です。
よく大道芸やコメディーとともに演奏されていた音楽ジャンルで、簡単に手作りできるような楽器を多く使うのも特徴です。トロンボーンの音色のように歪んで聞こえる楽器はカズー(管に張った膜を振動させる楽器)、後ろでカタカタ鳴っている打楽器はウォッシュボード(洗濯板のギザギザを爪でこする楽器)です。
1-2. キャンプをテーマにした楽器選び
音楽ジャンルが少し広い代わりに、楽器の選定は念入りに考えて進めたことを立山さんがインタビューで語っています。いずれも作品のテーマである「キャンプに合うか」が大切な基準になっています。
簡単に持ち運んで演奏できることを基準にして、室内やホールを連想するピアノはあまり用いないように意図されています。打楽器もドラムやコンガのような大きくしっかりした物ではなく、遊びで食器を鳴らすイメージで素朴なもの、少人数でゆるくキャンプを楽しむシーンに合わせて大編成のオーケストラではなく小編成…というように雰囲気を統一させています。
- 「ほとんど使わない楽器」ということであれば、ピアノは今回「禁じ手」にしました。(中略)―それは、キャンプ場にピアノは持っていけないからでしょうか?― そうです。
- キャンプ場で、食器を鳴らしてリズムを取っているようなイメージにしたら面白いんじゃないかと。
- 大編成のオーケストラを使うことは少なかったです。少人数でキャンプを楽しんでいるシーンに大編成の音楽が鳴るのは、少し違和感があると思いまして。
1-3. キャンプ場の個性をBGMで描き分ける
もう少し細かく見てみると、この作品で非常に重要な立ち位置であるキャンプ場に対してはキャンプ場ごとにその個性を表現したテーマ曲が用意されています。通常は登場人物の個性や心情に関わるBGMが多い中、この作品では風景の描写に重きを置いたことを京極義昭監督が語っています。
漫画と一番違うのは音楽がつくところなので、雰囲気をしっかり出すために音楽にはこだわりました。具体的に言うと、普通のアニメではキャラクターの心情やシーンの雰囲気に合わせて音楽をつけるのですが、この作品ではキャラクターよりも情景に音楽をつける意識でオーダーしています。
連続モノの番組では映像の制作前にBGMを作っておいて後から選曲する方式が一般的で、様々なシーンに使いやすいよう汎用的な曲も多くなるのですが、重要なシーンについては専用のBGMを用意することがあります。作品全体の雰囲気はもちろん、こうした場所ごとの雰囲気の違いが映像だけでなくBGMでも書き分けられているところに、キャンプの描写に対する力の入れ具合がうかがえます。
2. BGMの流れ始めるタイミングと意味
2-1. 登場人物の視点と俯瞰の視点
オープニングテーマの後は志摩リンがキャンプ場に向かうシーンから始まります。ここでは道沿いの風景と志摩リンが自転車を漕ぐ様子が交互に映し出されます。ここで流れる「ソロキャン△のすすめ」はシーンの開始ではなく、2:44の志摩リンの顔がアップで描かれるカットから始まっていて、風景だけではなく登場人物の性格もBGMが象徴しているように感じられます。
キャンプ場のテーマ曲「キャンプ場のテーマ ~本栖湖~」も到着後すぐに流れる訳ではありません。5:15からの林の中を通り抜けるカットと、自転車を停めて本栖湖を眺めるカットの後、画面全体に本栖湖と富士山の風景が映し出される5:23から流れ始めます。作品を観る側の俯瞰的な視点でBGMを流す場合もありますが、このように登場人物の視点と心情に寄り添ったタイミングでBGMを流すことで、視聴者も登場人物と同じタイミングで同じ気持ちを共有しやすくなります。
2-2. 心情の変化の暗示
エンディングテーマ直前にも登場人物の心情に寄り添ってBGMが流れ始めるシーンがあります。志摩リンは各務原なでしこの乗った車が出るのを見送って、反対側を向いて歩き始めます。すると不意に「ちょっと待って!」の声がして、後ろを振り返った19:44で明るいBGM「ゆるキャン△のテーマ」が流れ始めます。続いて「カレーめんありがとう」となでしこに言われて何かに気付いたようなハッとした顔をします。
志摩リンはソロでしかキャンプをしたことがなく、あくまで一人の時間を大切にしたいタイプのキャラです。しかし偶然なでしこと一緒に時間を過ごすことになってしまい、心の中では「面倒くさいな…」と思っている可能性も捨てきれません。そこでポジティブな曲が流れることで、無表情で感情が分かりにくい志摩リンの心情描写をサポートします。
なんとなく「悲しいシーンには悲しいBGM」と考えられがちですが、むしろ悲しいシーンにポジティブな音楽を当ててみたりと、BGMには映像では表現しきれない登場人物の内面やストーリーの進行を補佐したり暗喩するという非常に大きな役割があります [石丸 2009]。
3. BGMでシーンにまとまりを作る
3-1. カットを繋ぎ合わせる
今度は中盤の薪集めのシーンに注目してみます。大塚明夫さんの渋い声でナレーションが入ってキャンプの豆知識を解説したり、松ぼっくりが喋ったりと他のシーンと比べて少し異色です。シーン全体にひとつのBGMが付くことで豆知識を解説するシーンが続いていることを視聴者が理解しやすくなりますし、ナレーションが登場人物のセリフではないこともよりハッキリします。
次の焚き火の解説シーンからはBGM『ソロキャン△のすすめ』が使われます。BGMの展開とともに11:10からは時間帯の違うキャンプ場のカットをいくつも繋げて、ゆるやかに時間が過ぎていく様子を表現しています。このように複数のカットを繋ぎ合わせてシーン全体に別の意味をもたせる手法はモンタージュ (montage) と呼ばれます。すっかり夕暮れとなるシーンの終わりではBGMも一緒に終わることで、大きく時間がジャンプする次のシーンへの移行を分かりやすくしています。
3-2. ◯◯シーンのテーマ曲
映像作品ではカメラが一度に撮影できるひと続きの映像「カット」が切り貼りされて「シーン」ができます。現実世界では起きないようなカットの繋ぎ目での映像の急な変化を和らげるためにも、シーン全体にBGMを付けることはよく行われます [吉松 2009]。
こうしたBGMの使い方として分かりやすいのが、〇〇シーンのテーマ曲と呼ばれるようなBGMです。13:12からのギャグシーンBGM「ゆるやかな時間」や、12:53で志摩リンが逃走するときに流れるチェイスシーンのテーマ「キャンピングinポッシブル」がその例です。アコースティックなBGMの中で異様に目立つエレクトロニックサウンドがギャグ効果を強調しています。
16:01からなでしこがカレーめんを食べる場面で流れるBGM「キャンプ行こうよ!」は、第2話の冒頭や再開のシーンでなでしこが登場するときにも流れます。アニメ序盤では「なでしこのテーマ曲」のような使われ方がされるBGMです。キャラクターのテーマ曲は繰り返し登場人物と一緒に流れるので、逆に曲が流れることでその登場人物を連想させることもできます。
4. BGMが鳴り終わるタイミングとその効果
4-1. ギャグシーンでの突然の中断
BGMを流すことで逆にBGMが流れない部分を目立たせることもできます。例えばBGMを突然中断する技法はギャグシーンでよく使われていて、このゆるキャン△第1話でも志摩リンとなでしこが初めて会話をするシーンで突然中断するポイントが2か所あります。どちらもなでしこのボケるところで、ちょうどBGMが無くなって無音になったタイミングでお腹の音が響き渡ります。
こうしたギャグシーンでBGMを中断する演出は次回予告の手前、「へやキャン」のコーナーでも使われていて、無音になった後すぐに犬山あおいのツッコミが入ります。23:04でBGMを中断した後はすぐに次のBGMが流れるのですが、BGMとBGMのあいだに無音部分がないと少しせわしない印象になるのをテンポ感が重要なギャグシーンにうまく利用しています。
4-2. BGMの切れ目と脳活動
BGMを突然中断するのも強烈な効果がありますが、BGMが自然に終わってしばらく無音になるのも注意が引きつけられるタイミングのひとつです。1話の序盤は志摩リンをメインに話が進みますが、4:03と9:28で最重要人物のなでしこが寝ている様子を映す短いカットが挟まれます。どちらもちょうどBGMの終わるタイミングに重ねることで印象を強めています。
音楽やセリフなどの音をシーンの切り替わりピッタリで終わらせるのではなく、少し後までリバーブなどの余韻を残すことは業界用語で「こぼし」と呼ばれています。BGMがロングトーンで伸ばして終わる時にはその調整という側面もありますが、映像と音の終わりがぴったりシンクロするとコミカルに感じるので、次のシーンに雰囲気を引き継ぎつつ有機的に繋げる目的にも使います。
第1話のエンディングテーマ曲はそのままストーリーと映像が進行しながらセリフや効果音とともに流れますが、曲の終わるちょうど22:34頃にやはり志摩リンとなでしこがニアミスする重要カットが挟まれます。
Sridharanらによって行われたクラシック音楽を聞いている最中に脳活動を測定する実験では、楽章間で一度無音になるタイミングで脳が大きく活動することが確認されました。もちろん無音に対して脳が反応したのではありません。一体どういうことなのかと言うと、ヒトは現実世界の出来事を音が大きく変化する場所で区切って整理・記憶していることが指摘されています。[Sridharan+ 2007]
小説では例えば章を分けることで区切りを作ることができますが、映像では思考を整理するヒマもなく一瞬で次のシーンへと進んでしまいます。この実験結果を踏まえると、シーンという映像作品の意味上の区切りに合わせて、鳴り終わりと流れ始めが分かるように明快にBGMを切り替えることで、無意識的に記憶を整理して定着させる=作品の印象を強くする効果があると言えます。
5. BGMを無くすリスクと無音の活用法
なでしこの目線で始まる冒頭の1分程のシーンはBGMがありません。第1話の他のどのシーンとも時間のつながりがなく、伏線としての意味もありそうな重要なシーンです。あえてBGMを無くすことで1話の他のシーンとは違う異質な雰囲気を作り出しています。
よく「BGMは目立たない方が良い(?)」という少し誤解を含んだ言い方がされます(※実際はBGMが目立つべきシーンもありケースバイケース)。では究極BGMを無くして焚き火や風の音といったキャンプ場のリアルな環境音だけにすれば解決するのでしょうか?
5-1. 無音は集中力を奪う
騒音はストレスですが、無音もストレスに繋がることが分かっています。例えば会話が途切れて沈黙すると気まずかったり、他にはお化け屋敷で不安・緊張を煽るのも無音の効果です。試験や面接では無音が作り出す緊張感が必要ですが、その後はどっと疲れが出るように集中力をすぐ使い切ってしまいます。
映画の歴史を振り返ると初期の頃は映写機の音がうるさく、BGMが周囲の気になる雑音を覆い隠す効果も重宝されました [Kalinak 2001]。カフェで周囲の話し声が気になる所をBGMに注意を向けさせたり、テーマパークで夢の世界に合わない現実感のある雑音をBGMでかき消したりと、この効果は身近な所でも使われています。
無音は人に緊張や不安を与えて疲れさせてしまうほか、周りの生活音や雑音が気になって現実に引き戻されてしまったりと無音は没入を妨げるので、長い時間リラックスして集中が途切れることなく楽しんでもらいたいエンタメではBGMが必要とされるのです。
5-2. 有音↔無音の変化で注意を引く
一方で使い方次第では無音は良い効果も生み出します。先ほどの実験を少し思い出してみます。音が大きく変化すると脳も大きく活動するということは、逆に言えば「BGMが延々と流れ続ける状態」「長い間BGMが流れない状態」どちらも同じ音の状態が続くことで脳が反応しなくなる=耳が慣れて認識から消える現象(順化)が起きます。
改めて1話の他の部分も見てみると、BGMが終わってから次のBGMが始まるまでに短いインターバルが設けられています。どれだけ心地良い環境音を鳴らしても必ず慣れが起きて意識から外れてしまいます。そこでBGMを流すことで、逆にBGMが途切れるタイミングで改めて環境音が強く認識される効果、そして作品全体にメリハリを生み出しています。
コラム:静けさで注意を引き付ける方法
もう1つ重要なのは象徴的な無音シーンを0:00~1:00という作品の1番最初に持ってきている点です。緊張や疲れに繋がりやすい無音シーンがもし後半にあれば、集中力が下がってきた視聴者にはトドメとなってしまい、他の事に気移り・離脱してしまうかもしれません。開始直後で集中力MAXなので1分という長い無音でも視聴を継続してもらえるというワケです。
似たような話として、始まったばかりの最初の部分だけ敢えて音量を小さくして「あれ?よく聞こえないな?」と思わせて注意を引くテクニックがあります。
6. BGMで伏線を張る
6-1. ライトモチーフ
ここからは16:48頃からのゆるキャン△第1話のクライマックスシーンを見ていきます。遡ると5:23の昼間の本栖湖と富士山の風景カットにも対応するシーンです。BGMもよく聴くと昼間のシーンで流れたメロディーのアレンジになっています。短いメロディーや音のパターンをキャラクターやイベントと結び付けたり、またその変化を音のアレンジにより暗喩する手法はライトモチーフ (Leitmotif) と呼ばれます [Gustavo 2004]。
BGM「キャンプ場のテーマ~本栖湖~」はグレート・ハイランド・バグパイプの特徴的な音色が聞こえたりと全体的にケルト音楽風の曲です。湖に到着した直後の5:33や5:45などで同じくケルト音楽の笛ティンホイッスルで演奏・提示される本栖湖のライトモチーフを聞くことができます。すぐ後の薪集めのシーンでも少しお茶目なアレンジになってモチーフが繰り返されます。
6-2. モチーフの変形と再提示
暗闇の中で本栖湖と富士山を覆う雲が一瞬だけ画面に映る16:48から「キャンプ場のテーマ ~本栖湖~」の後半部分が聞こえるか聞こえないかくらいの小さな音量で流れ始めます。少しずつ月明かりが差し込み始める伏線のカットを挟み、18:16でついに本栖湖と雲がとれた富士山の風景が映し出されると同時にライトモチーフがもう一度提示されて、ここで伏線が回収されます。
昼間のモチーフそのままではなく1オクターブ高く演奏されていたり、昼の歯切れのよい演奏とは違って音が長く伸ばされていたりと、雲がなくなり一気に視界が開けた様子が感じられます。ライトモチーフの真髄は単純にモチーフを繰り返すことではなく、情景や心情の変化をモチーフのアレンジによって暗喩して作品に深みを与えることにあります。
映像と同じようにBGMも少し手前から一気に盛り上がってちょうど18:16でクライマックスを迎えます。先ほど音が大きく変化する場所で脳も大きく活動するという研究を紹介しましたが、ここでは音楽を大きく展開させることで視聴者の注意を引きつけています。映像音楽では曲の途中で曲調が大きく変化すると映像の印象も大きく変えてしまうので避けられることが多いのですが、こうした場合は例外です。
追記:2期1話のライトモチーフと心理描写
1期1話とはどこか違う本栖湖キャンプ場
2期1話のAパートは志摩リンが本栖湖キャンプ場で初めてキャンプに挑戦した過去の話で、時系列で言えば1期1話の方が後になります。オープニングテーマが終わる4:00から1期とそっくりのカットが続き、4:14からはBGMのイントロ、4:30からはBGMのメロディーが流れ始めます。
1期のBGMの雰囲気に似ている気もしますが、メロディーに関しては1期の本栖湖キャンプ場のテーマ曲と明確に異なっています。1期とまったく同じ本栖湖キャンプ場のはずなのに、この時点ではまだどこか違うという感覚があるのです。この場合、主人公である志摩リンの心の中の感覚を描写していると解釈できます。志摩リンは初挑戦のキャンプで思うように行かず、失敗続きのまま夕方を迎えます。
本栖湖キャンプ場ライトモチーフの意味
序盤ではキャンプをのんびりと楽しむ余裕もなく、現在のようにソロキャンを楽しむ志摩リンの姿はまだ見えてきません。しかし母からの電話でカレーめんの存在に気づくと9:55からBGMも始まり流れが大きく変わります。特にBGMの展開部分と重なる11:12から心境が大きく変化します。
11:20では聞き覚えのあるメロディーが現れます。これは1期の本栖湖キャンプ場のモチーフの変形です。そして志摩リンの表情が変わるタイミング(11:35)の後、1期1話のクライマックスで流れたものと同じモチーフが演奏されます。この時のセリフが「木を切る道具、あと椅子か… お小遣いで買えるかな?」です。
またキャンプに挑戦したいという11:35の決意の瞬間に1期1話で志摩リンとなでしこが出会う運命が決まったからこそ、ここで1期1話の本栖湖キャンプ場のライトモチーフが初めて使われたのです。続いて同時刻のまったく違う場所にカメラが切り替わります。志摩リンと同じように、なでしこが富士山を眺めるカットです。そして12:04には大きく時間をジャンプして現在のなでしこと志摩リンの映像につながります。
おわりに
BGMの雰囲気はもちろんですが、BGMの流れ始めるタイミングや流れ終わるタイミング、流し方によっても映像の印象は大きく変わります。選曲・音響効果の人が担当することになるBGM選びやその流し方、セリフ・効果音とのバランスの調整なども映像音楽には欠かすことのできない重要な作業です。
映画音楽では仕上がった映像を見ながら作曲家が付けていくフィルムスコアリングの手法が一般的ですが、連続もののドラマやアニメでは作品のあらすじを元に作曲家があらかじめ作っておき、後から選曲とBGM編集を行う溜め録りの手法が普通です。それでも後の選曲や音響効果の作業を見据えて作曲することで、これだけの映像に寄り添った音楽に仕上げることができます。
参考文献
- [Sound Designer 2018] サウンド・デザイナー (2018): “最先端を行く音楽クリエイター達 ― 立山秋航=「ゆるキャン△」”, 『サウンド・デザイナー 2018年3月号』.
- [千葉 2018] 千葉研一 (2018): “「ゆるキャン△」京極義昭監督インタビュー:ロケハンを重ねてキャンプの空気感、料理、温泉まで魅力をすべて詰め込みました!”, 『アキバ総研』. (https://akiba-souken.com/article/32693/)
- [石丸 2009] 石丸 基司 (2009): “作曲 雑感”, 『伊福部昭オフィシャルサイト』. (https://www.akira-ifukube.jp/オリジナルエッセイ/作曲-雑感①/)
- [吉松 2009] 吉松 隆 (2009): “映画音楽の作り方”, 『月刊クラシック音楽探偵事務所』. (http://yoshim.cocolog-nifty.com/office/2009/11/post-b3e7.html)
- [Sridharan+ 2007] Devarajan Sridharan, Daniel J. Levitin, Chris H. Chafe, Jonathan Berger, Vinod Menon (2007): “Neural Dynamics of Event Segmentation in Music: Converging Evidence for Dissociable Ventral and Dorsal Networks”, Neuron – Cell Press. (https://www.cell.com/neuron/fulltext/S0896-6273%2807%2900500-4)
- [Kalinak 2001] Kathryn Kalinak (2001): Settling the Score: Music and the Classical Hollywood Film. Madison, University of Wisconsin Press: p.41.
- [Gustavo 2004] Gustavo Costantini (2004): “Leitmotif revisited”, Filmwaves, Vol. 23. (http://filmsound.org/gustavo/leitmotif-revisted.htm)