
日本から遠く離れた地域の民族音楽なのにどこか不思議と懐かしく感じる人は少なくありません。
よく指摘されるのは日本の民謡と同じく5音音階を使うという点です。5音音階は世界各地に分布していますが、西~北ヨーロッパではほぼ他に見られない珍しい特徴です。しかし一方で、見かけ上は7音音階も用いるように見えるなど複雑です。ケルト系民族の音楽における音階の特徴はどこにあるのでしょうか?
本書では、和声やコード進行のような西洋音楽の視点ではかえって複雑になってしまい、また混乱を招いてきた音階やメロディーの構造について、旋律法や民族音楽学の視点から見通すことで整理・分析をします。
アイルランドとスコットランドを中心にマン島、ウェールズ、コーンウォール、ブルターニュ、ガリシア、アストゥリアスといったケルト文化圏各地の音楽も取り上げました。
また、他のヨーロッパ地域や日本を含む東西アジアの民族音楽とも旋律の構造を比較をして、最新の歴史研究とも照らし合わせながらケルト音楽の旋律法のルーツについても考察します。